結論から言うと、発注方式は「責任施工方式」「設計監理方式」「管理会社元請方式」の3つです。100戸を超える規模や、過去に施工品質でもめた経験がある管理組合は設計監理方式、50戸前後までの中小規模でコストと手間を抑えたい場合は責任施工方式が向いています。判断の分かれ目は、第三者のチェック機能にコンサルタント費用(工事費の5〜10%が目安)を払う価値があるかどうかです。
この記事では、京都・滋賀で大規模修繕を手がけるシンセイ株式会社が、3つの方式の責任範囲・費用・管理組合の手間を比較し、規模別の選び方と、どの方式でも共通して確認すべきチェック項目を整理します。
大規模修繕の発注方式は3つ。まず全体像から
発注方式の違いは、ひとことで言えば「設計・監理を誰がやるか」です。工事そのものを施工会社が行う点はどの方式も変わりません。違うのは、その工事を設計し、品質をチェックする役割を、施工会社が兼ねるか、第三者が担うか、管理会社が取りまとめるかという点です。
| 方式 | 設計・監理の担い手 | 費用感 | 管理組合の手間 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| 責任施工方式 | 施工会社が一貫して担当 | コンサルタント費用が不要な分、総額は抑えやすい | 窓口が1社で少ない | 中小規模/コストと手間を抑えたい |
| 設計監理方式 | 設計コンサルタント(第三者) | 工事費+コンサルタント費用(工事費の5〜10%が目安) | 2社とのやり取りが必要 | 大規模/品質チェックを重視したい |
| 管理会社元請方式 | 管理会社が取りまとめ | 管理会社の経費が上乗せされる | 最も少ない | 理事会の稼働を確保しにくい |

責任施工方式|窓口が1社で、費用と手間を抑えやすい
調査診断から設計、施工、完成後の点検までを1社の施工会社に一任する方式です。管理組合は1社とだけやり取りすればよく、理事会の負担が軽くなります。設計と施工が同じ会社なので、現場で想定外の劣化が見つかったときも判断が速いのが実務上の利点です。
一方で、設計した会社が自分の工事をチェックすることになるため、第三者の目が入りません。そのぶん、施工会社をどう選ぶかに結果が大きく左右されます。相見積もりを取る際も、各社が仕様を自由に設計するため、金額を単純比較しにくいという難点があります。
この方式を選ぶなら、調査診断の報告書を書面で受け取り、なぜその工事が必要なのかを説明できる会社かを必ず確認してください。「とりあえず全面塗り替え」ではなく、部位ごとの劣化状況と優先順位を示せるかどうかが分かれ目です。
設計監理方式|第三者がチェックする、大規模向けの本命
設計コンサルタントが調査診断・仕様設計・施工会社の選定支援・工事監理を担い、施工は別の会社が行う方式です。設計と施工が分離されるため、手抜き工事が起きにくく、各社が同じ仕様で見積もるので金額を横並びで比較できます。100戸を超える規模や、工事費が1億円に近づく案件では、チェック機能のコストを払う価値が出やすくなります。
デメリットは費用です。コンサルタント費用は工事費総額の5〜10%程度が目安とされ、一般には5〜8%に収まることが多いものの、小規模マンションほど工事費に対する割合が高くなります。戸数が少ないほど、この方式のコスト負担は重く感じられます。
もうひとつ、知っておきたい論点があります。国土交通省は2017年に、設計コンサルタントをめぐる不適切な事例について管理組合への注意喚起を行っています。コンサルタントが施工会社から不当な見返りを受け取る、実際の調査診断を施工会社の社員が行っていた、といった事例が挙げられました。第三者を入れれば自動的に安心、というわけではないという点は押さえておいてください。
管理会社元請方式|手間は最小、ただし経費は乗る
管理会社が元請となり、施工会社を手配する方式です。日常的にやり取りしている相手に任せられるため、理事会の負担は3方式のなかで最も軽くなります。区分所有者への告知や共用部の調整も、管理会社の既存の仕組みに乗せられます。
ただし、管理会社は工事の実務を自社で行うわけではないため、取りまとめの経費が工事費に上乗せされます。また、実際に施工する会社を管理組合側で選びにくい構造になりがちです。見積書の内訳で、どこまでが工事費で、どこからが管理会社の経費なのかを確認しておきましょう。
規模・状況別の選び方
| 状況 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| おおむね50戸以下 | 責任施工方式 | コンサルタント費用の割合が重くなりすぎる |
| おおむね100戸以上 | 設計監理方式 | 工事費が大きく、チェック機能のコストを吸収できる |
| 過去の工事で品質にもめた | 設計監理方式 | 第三者の記録が住民への説明材料になる |
| 理事の担い手が不足している | 管理会社元請方式 | 稼働を確保できないまま進めると判断が滞る |
| 1回目の大規模修繕 | 責任施工方式も選択肢 | 劣化が軽く、工事内容が標準的に収まりやすい |
なお、規模は目安にすぎません。同じ80戸でも、タイル張りで形状が複雑な建物と、吹き付け仕上げの直方体では、必要な検討の深さがまったく違います。タイルの打診調査が必要な建物かどうかも、方式選びに影響します。

どの方式でも共通する、失敗しないためのチェック項目
- 調査診断の結果が書面で残っているか。劣化の部位・程度・写真がそろっていれば、後から住民へ説明できます
- 見積書が「一式」だらけになっていないか。数量と単価が入っているか確認してください
- 足場・仮設の期間と面積が現実的か。ここが過大だと総額が膨らみます
- 工事中の記録の残し方が決まっているか。下地処理や塗り回数は、完成後には確認できません
- 保証の範囲と年数が部位ごとに書かれているか。「10年保証」の一言だけでは不十分です
- 居住者対応の窓口が誰か。洗濯物やバルコニーの使用制限は、工事中の不満が最も出やすい部分です
工事の進め方そのものはマンション大規模修繕の流れで、費用と周期の考え方は大規模修繕の周期は何年が目安かで詳しく整理しています。
よくあるご質問
Q. 責任施工方式は設計監理方式より安いのですか?
コンサルタント費用が発生しないぶん、総額は抑えやすい傾向があります。ただし工事費そのものが安いとは限りません。仕様が各社まちまちになるため、金額だけでなく「何をどこまでやるか」を並べて比較する必要があります。
Q. 途中で方式を変えることはできますか?
調査診断の段階までであれば変更は可能です。ただし施工会社の選定に入ったあとで方式を変えると、見積もりを取り直すことになり、総会のスケジュールに影響します。方式は修繕委員会の立ち上げ時に決めておくのが現実的です。
Q. 修繕積立金が不足している場合はどうすればよいですか?
まず調査診断を行い、今回必ずやるべき工事と、次回に回せる工事を分けることから始めてください。防水と躯体の保護に関わる部分は先送りするほど費用が膨らみますが、意匠に関わる部分は調整の余地があります。
Q. 相見積もりは何社から取るのが適切ですか?
3社程度が現実的です。多すぎると比較の作業量が理事会の負担を超えてしまいます。責任施工方式の場合は、各社に同じ調査結果を渡したうえで提案を出してもらうと比較しやすくなります。
Q. 小規模マンションでもコンサルタントを入れる意味はありますか?
工事費に対する割合が重くなるため、費用対効果は慎重に検討してください。第三者のチェックが目的であれば、マンション管理士に部分的にスポットで依頼する方法もあります。
まとめ
発注方式に唯一の正解はありません。戸数・建物の複雑さ・理事会が割ける時間・過去の経緯の4つを並べて、どこに重心を置くかで決まります。責任施工方式は手間と費用を抑えられる代わりに施工会社選びがすべてで、設計監理方式は第三者のチェックが入る代わりにコンサルタント費用と選定の目が必要になります。
シンセイ株式会社は、京都・滋賀で外壁塗装・防水・大規模修繕を手がけています。建設業許可14業種を持ち、下地・躯体の補修から仕上げまで一貫して対応できるため、責任施工方式でのご相談はもちろん、設計監理方式での施工会社としてもお受けしています。工程写真の記録と施工写真台帳を標準でお渡ししているので、住民の方への説明資料としてもお使いいただけます。
「そもそもうちの建物は今すぐ工事が必要なのか」という段階からで構いません。今すぐ工事が必要ない場合は、その旨を正直にお伝えします。
シンセイ株式会社/京都本店 075-874-3375・福知山本社 0773-24-1116・大津営業所 070-2287-8568
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