大規模修繕の進め方

外壁改修の下地・躯体補修とは?|爆裂・ひび割れ補修の工法と費用の目安

外壁改修の仕上がりと耐久性を左右するのは、塗料のグレードよりも「下地・躯体補修」です。ひび割れや鉄筋の爆裂を残したまま塗装しても、劣化の原因が消えていないため数年で同じ症状が再発します。逆に下地・躯体補修を適切に行えば、同じ塗料でも塗膜が本来の性能を発揮しやすくなります。

ここでは、下地・躯体補修とは何をする工事なのか、主な工法と費用の目安、見積書のどこを見ればよいのかを、マンション大規模修繕や工場・倉庫の改修に携わる立場から整理しました。

下地・躯体補修とは?外壁塗装との違い

外壁改修は大きく「下地・躯体補修」と「仕上げ(塗装・防水)」の2つに分かれます。下地・躯体補修は、コンクリートやモルタルに生じたひび割れ・欠損・浮き・鉄筋の露出などを、樹脂やモルタルで元の断面に戻し、健全な状態に復旧する工事です。

一方の塗装は、その健全になった面に保護膜をつくる工事です。順序を入れ替えることはできません。塗装は「守る」工事、下地・躯体補修は「治す」工事と考えると分かりやすいはずです。治さないまま守っても、内側の進行は止まりません。

下地・躯体補修を省くと何が起きるか

見積金額を抑えるために下地・躯体補修の数量を極端に絞った場合、次のような不具合が起こりやすくなります。

  • 補修していないひび割れから雨水が浸入し、塗装後1〜3年でクラックが再度表面に出る(目安)
  • 浮いたモルタルやタイルの上に塗装したため、塗膜ごと剥離・落下する
  • 鉄筋の腐食が進行し、次回工事では補修範囲・費用が大きく膨らむ
  • 雨漏りが再発し、内装や設備の二次被害につながる

つまり、下地・躯体補修は「削ると安くなる項目」ではなく、「削ると次回に高くつく項目」です。劣化の見分け方は外壁の塗り替え時期を見分ける7つのサインでも解説しています。

なぜ躯体は劣化するのか|中性化と鉄筋の爆裂

コンクリートは本来pH12〜13の強いアルカリ性で、内部の鉄筋は不動態皮膜に守られて錆びません。ところが空気中の二酸化炭素が浸透してセメント水和物と反応すると、アルカリ性が失われていきます。これが中性化です。

中性化の深さは一般に経過時間の平方根に比例して進むとされ、鉄筋を覆う「かぶり厚さ」の位置まで達すると鉄筋が腐食を始めます。鉄は錆びると体積が膨張するため、内側からコンクリートを押し割り、ひび割れ・浮き・剥落へと進みます。これが爆裂と呼ばれる現象です。

外壁コンクリートに発生した縦方向のひび割れと補修跡
ひび割れは表面だけの問題ではなく、内部の鉄筋腐食のサインであることがあります

重要なのは、爆裂は「起きてから」ではなく「起きる前」に手を打つほうが安く済むという点です。表面の細いひび割れの段階で止められれば処置は軽く済みますが、鉄筋が露出してからでは、はつり・ケレン・防錆・断面修復と工程が増えます。

下地・躯体補修の主な工法と費用の目安

劣化の種類ごとに、使う工法が変わります。代表的なものを整理しました。金額はいずれも一般的な目安であり、建物の規模・高さ・劣化程度・足場条件によって変動します。

劣化の状態主な工法内容単価の目安
幅0.2mm未満の微細なひび割れ塗膜弾性材・フィラー処理仕上げ材でまたいで追従させる数百円/m 程度
幅0.2〜1mm程度のひび割れ樹脂注入工法(低圧注入)エポキシ樹脂を内部まで充填し一体化2,000〜4,000円/m 程度
幅1mm以上・挙動のあるひび割れUカットシール工法U字に約10mm掘削しシーリング材を充填2,000〜4,000円/m 程度
モルタル・タイルの浮きアンカーピンニング(エポキシ樹脂注入)ピンと樹脂で下地に留め直す部分補修 300〜500円/穴 程度
広範囲のモルタル浮き全面ピンネット工法繊維ネットとピンで面的に固定5,000〜8,000円/㎡ 程度
鉄筋の露出を伴う爆裂・欠損断面修復(防錆処理+ポリマーセメント/エポキシ樹脂モルタル充填)はつり→ケレン→防錆→充填→成形1,200〜3,000円/箇所 程度
タイルの割れ・欠損タイル張替え同等品または近似色で張り替え部分補修 1万円/㎡前後 目安
出典をもとにした一般的な目安。実際の単価は現地調査と仕様により決まります

シンセイでは、下地のはつりから防錆・断面修復、仕上げまでを自社一貫で行っています。工程が分断されないため、補修の判断と仕上げの判断を同じ目で通せるのが利点です。

外壁の下地調整としてモルタルを塗り付ける補修作業
断面修復や下地調整は、仕上げの下に隠れてしまう工程だからこそ記録が重要になります

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京都・滋賀の気候と下地・躯体補修の注意点

躯体の劣化速度は、その土地の気候に強く左右されます。京都盆地は夏の高温多湿と冬の底冷えの差が大きく、コンクリートやモルタルの伸縮によるひび割れが出やすい環境です。琵琶湖畔の大津周辺は湿度が高く、乾きにくい面では藻・カビや凍害のリスクが上がります。

福知山をはじめとする丹波・北近畿エリアは霧が発生しやすく、冬季には積雪もあります。水を含んだ状態で凍結と融解を繰り返すと、ひび割れは加速度的に広がります。そのため、同じ築年数でもエリアによって下地補修の数量は変わります。地域別の詳しい傾向は福知山の外壁塗装大津の外壁塗装のページでも触れています。

下地補修は「見積り時点で数量が確定しない」|見積書の見方

下地・躯体補修でトラブルになりやすいのは、足場を架けて近接目視・打診をするまで正確な数量が分からないという性質があるためです。そのため見積書には主に次の2つの方式があります。

方式内容メリット注意点
実数精算方式仮の数量で計上し、実際の施工数量で精算する過不足なく適正な金額になりやすい最終金額が着工時点では確定しない。数量の確認方法を事前に決めておく
一式・定額方式下地補修を一式で計上する予算が読みやすい内訳が不明瞭だと、必要な補修が省かれても気づけない
大規模修繕では実数精算方式が採用されることが多くあります

確認しておきたいのは、「単価が工法ごとに分かれているか」「数量の確定方法と立会いのタイミングが書かれているか」の2点です。ここが曖昧な見積書は、金額の比較そのものが成立しません。比較の進め方は相見積もりの正しい取り方もあわせてご覧ください。

下地・躯体補修の品質を担保する「記録」

下地・躯体補修は、仕上げ材の下に完全に隠れてしまいます。完成後に外から検証できない工事だからこそ、工程写真の記録が品質の証明になります。

  • 補修前(劣化状況とマーキング、位置が分かる引きの写真)
  • はつり・ケレン後の下地状況と鉄筋の状態
  • 防錆材塗布の状況
  • 断面修復材の充填・成形状況
  • 補修完了後、および仕上げ完了後

シンセイでは建設業14業種の許可と有資格者の体制のもとで、これらを施工写真台帳としてまとめてお渡ししています。実際の工事事例は施工実績でご覧いただけます。

よくあるご質問

Q. 髪の毛のような細いひび割れも補修が必要ですか?

A. 幅0.2mm未満のヘアークラックは、塗装時の下地調整材で追従できる場合が多く、単独での補修が不要なこともあります。ただし本数が多い、方向がそろっている、開口部の角から斜めに伸びているといった場合は、構造的な動きが原因の可能性があるため個別の判断が必要です。

Q. 下地補修の費用は大規模修繕全体のどれくらいを占めますか?

A. 建物の状態によって幅がありますが、外壁関連工事のなかで無視できない比率を占め、劣化が進んだ建物ほど比率が上がります。築年数が経つほど数量が増えるため、周期を延ばすほど総額が上がりやすい構造です。周期の考え方は大規模修繕の周期で解説しています。

Q. 打診調査は必ず必要ですか?

A. モルタルやタイルの浮きは目視だけでは判別できないため、打診(テストハンマーによる打音確認)は有効です。高所については赤外線調査やドローンを併用する方法もあります。どの範囲をどの方法で調べるかは、建物の高さ・形状・予算に応じて決めます。

Q. 部分的にだけ補修して、塗装は次回にできますか?

A. 可能な場合もありますが、足場を要する高所であれば、足場費用が二重にかかる点に注意が必要です。足場を架けるタイミングで補修と仕上げをまとめたほうが、総額では有利になるケースが多くあります。

Q. 工場や倉庫でも同じ考え方ですか?

A. 基本の考え方は同じですが、稼働を止められない施設では、補修範囲を優先度で分け、区画ごとに工程を組む方法をとります。粉じん・騒音・臭気への配慮や、搬出入動線の確保も計画に織り込む必要があります。

まとめ|下地・躯体補修が外壁改修の土台になる

  • 外壁改修の耐久性は、塗料のグレードより下地・躯体補修の丁寧さで決まる
  • ひび割れ・浮き・爆裂は、中性化と鉄筋腐食という共通の原因でつながっている
  • 工法は劣化の種類ごとに異なり、費用は工法別の単価で確認する
  • 下地補修の数量は足場を架けてから確定するため、見積方式と立会い方法を事前に決めておく
  • 隠れてしまう工事だからこそ、工程写真の記録が品質の裏づけになる

京都盆地・琵琶湖畔・北近畿では、それぞれ劣化の出方が異なります。ご自身の建物がどの段階にあるかを知るところから始めていただければと思います。

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